こんにちは、たけうちです。
自社製品で市場開拓をしたいというシステム機器開発の社長から相談を受けました。
社長は「自社製品を開発したが、市場開拓できない!」と悩んでいました
お話をお聞きすると、社長は環境システム装置を企画開発しました。最初は話を聞いてくれて良い製品だと誰もが評価してくれるのだそうです。
しかし、「実績がない」と言われ購入してくれないと嘆いていました。この事業の販売体制は少人数なので、販売とサポートをやってくれる販売チャネルの開拓が急務なのです。実際、社長は次のようなことで悩んでいました。
- 自社製品の販売は初めてなので何もかもが手探りだ
- 鶏が先か卵が先か「導入実績が無いので購入できない」と言われると困ってしまう
- 導入してもらうには会社によって課題が違うので「単純ではない」と実感している
- どういう会社にアプローチすればよいのかがわからなくなってきた
- 販路開拓のために販売チャネルをどうやって探せば良いかわからない
- 自社製品の開発販売を請負開発と同じように考えていたが全く違った
- 販売チャネルと販売契約を締結しても売ってくれない
メーカーとなり自社製品を開発販売するのと下請けとして装置を請負開発するのとは全く別次元なのです。開発製造プロセスは同じなので勘違いしてしまうのです。
又日本の市場は中小企業が参入しても導入実績を問われて、どんなに良い製品であっても購入してくれません。これはこの会社の社長だけの悩みではありません。日本の中小企業が抱えている共通の壁なのです。
市場開拓を成功させる10の心得
- 製品が良ければ売れるという認識は甘い
- 製品価値は製品の機能や性能ではなく、顧客が求める効果に対応できるかで決まる
- 日本市場は知名度の無い中小企業から、実績のない製品を購入することをしない
- 市場開拓(マーケット開発)はコストがかかり簡単ではない
- 営業に任せれば市場開拓ができるという考えは違う
- 市場開拓はマーケティング戦略があって、販促戦略があり、営業戦略がある
- 製品価格が高いから売れないという考えは大きな間違い
- 価格戦略はどの顧客層(市場)にどういう仕組みでアプローチするかで決まる
- システム製品はその単体スペックで評価されるわけではない
- システム製品はサービスを含めたトータルソリューションとして評価される
「製品が良ければ売れる」的な間違った固定化観念(自信)は技術系の会社に共通して見られます。上記は市場開拓する上での基本的な心得です。言うならば、思い込みへの戒めです。
市場開拓の基本的な7段階プロセス
その1.自社製品の価値を知る
自社製品の機能、性能、操作性(使い勝手)等の製品スペックを明確にすることです。製品スペックを体系的にまとめることなので、簡単にできると思います。できれば製品スペックを体系的に可視化できればベストです。そして、製品スペックを製品価値と先ず考えておきます。
その2.製品価値が役に立つ顧客層を考える
製品価値を求めると思われる様々な想定顧客を洗い出します。そして、想定顧客の活用シーンを想像するのです。多くは、例えば請負開発の時の顧客ニーズに触発されて製品を開発されていると思いますので、簡単にイメージできると思います。
その3.製品価値で解決できる顧客層の悩み(課題)を机上で考える
簡単に言うと、顧客視点で製品導入したら何に役に立つかを考えるわけです。いくら性能が良くても導入した人の役に立たなければ意味が無いわけです。次第に製品価値のもたらす効用が見えてきます。もし、製品価値の意味が変わってきていれば感の良い方だと思います。
その4.想定顧客に実際にアプローチする
実際に想定顧客に考えたことをプレゼンして見るわけです。テストマーケティングをするのです。そうすると、想定顧客から洗礼を受け顧客の声が聞こえてきますので、机上の考えが修正されるはずです。想定顧客も絞られ、未来の顧客層が見えてくると思います。
その5.モデル事例を創る
テストマーケティングでここぞと思う顧客を見つけて導入してもらいます。主要な顧客層にモデル事例を開発していきます。そうすると各顧客層におけるユーザーの導入効果がわかり、それぞれの顧客層に対する市場開拓の営業方程式が見えてきて、決め技を開発できるでしょう。
その6.ビジネスモデルを考える
この段階になると、いろいろな戦略が頭をめぐり、戦略的なビジネスモデルも見えているはずです。事業戦略がクリアになり、ビジネスモデルも決まり、商品戦略、ブランディング戦略、プロモーション戦略、営業戦略、事業体制‥等を盛り込んだ事業計画ができるでしょう。
その7.本格的な営業活動を展開する
テストマーケティングで開発した導入事例と営業方程式をベースにして、販売チャネル開拓、OEM開拓、ダイレクト販売と営業活動をおこないます。想定した未来顧客層に向けたプロモーション活動で引合いを獲得しながら営業展開を本格的に進めることができるはずです。
この会社の市場開拓は動き出したのか?
社長は「市場開拓の基本的な7段階プロセス」を検討して直ぐに、スペック本位の売り方をしていたことに気が付きました。単なるスペックを顧客に押し付けた物売りだったのです。顧客のことを考えていなかったのです。現在、自社製品の価値で悩みを解決できる顧客層に照準を合わせて営業展開することができるようになり、ビジネスの手応えを感じています。「今まで空回りしていた」と自分で呆れているそうです。
自社製品の市場開拓は中小企業にとり夢あることですが、大きなチャレンジです。このようなチャレンジは時代の変化に適応しながら、自立した経営が出来るようにする道ではないでしょうか。尚、このような会社の事業が成功すると支えている協力会社の事業へも波及し、良い循環になって行きます。
(神楽坂コンサルティング株式会社 社長の相談役 竹内一郎)