会社を作り、社長になるのは簡単です。誰にでもできます。しかし、会社を経営することは別次元です。思い描いたビジネスを成功させる為には社長は先ず経営者としての覚悟をしなければなりません。
その1.経営リスクを一身に背負う社長
日本の中小企業社長は会社の全てのリスクを背負っています。万一の事態には今まで必死に築いてきた信用と全財産を一瞬にして失います。中小企業の多くは家族と共に会社を築き上げていますので、家族と共に全てを失い、丸裸にされ世の中に放り出されるのです。
何故なら、日本は金融機関から資金を調達するときに非上場企業の社長は連帯保証を求められます。それは、金融機関の思惑で人生を賭けた全てが一瞬にして消失する危険を会社経営は常にはらんでいることを意味しています。
日本で会社を経営することは「万一の事態、船長(社長)は沈みゆく船(会社)と共に海底深く一人落ちてゆかねばならぬ定めである。」ことを先ず肝に銘じておく必要があります。
日本の社会と仕組での会社経営はリーグ戦ではなく高校野球のようにトーナメント戦です。負けた時点で退場の選択しかありません。しかも、一度経営に失敗した社長が新たに会社経営にチャレンジすることは極めて至難なことなのです。
このことは起業にチャレンジするハードルを上げ、失敗経験のある価値あるチャレンジャーの活躍を阻害し、日本経済の活力を大きく削いでいます。(実際、失敗経験は宝の山、真摯に経営をやってきた人物なら再チャレンジの成功確率は格段に高くなるでしょう。)
その2.公私混同はNO、私公混同はYES
会社を始めたら、公私混同は絶対に慎まねばなりません。(公私混同はNO)
特に人を雇っていたら、まともで有能な人材は去り、公私混同に順応した組織になっていきます。そして、公私混同は社員の指揮を下げ、良い人材(人財)は去り、会社の活力を徐々に削いでいくでしょう。
又、仕事に関係ない費用(私的費用)を会社の経費として計上したり、節税のために不要なものを購入したりすると会社の経営状況が正しく見えなくなってきます。もし、このことが日常的に行われていたなら月次決算書は正しく経営状況を表さなくなり、その経費を意識していても社長の経営感覚は麻痺してくるでしょう。
そして、節税?という大義名分にばかり社長が意識することは本来のビジネスに関係ないベクトルを作用させることになります。会社は節税?のためにビジネスをやっているというベクトルが経営の意思決定に強く働き、無駄な思考をして本末転倒の経営になっていくでしょう。
会社を始めたら、私公混同を覚悟しなければなりません。(私公混同はYES)*私公混同は筆者の造語
中小企業は法人と言っても、社長と一心同体です。金融機関からの調達には代表取締役は連帯保証を求められ、社長の家屋敷は抵当権設定を強いられます。
保証協会付き融資も、不測の事態には金融機関は保証協会から回収し、保証協会が連帯保証人に返済を迫ってきます。保証協会は経営者の為でなく、金融機関の為にあるのです。
会社の運転資金がショート(不足)しそうになったら、社長個人の預金を解約して会社の資金に嫌でも回さなければなりません。もし、手を打たねば会社は不測の事態に陥ります。社長は逃げられないのです。
社長はプライベートな時間が持てなくなります。24時間365日会社のことばかり考えています。頭をどこから切っても会社!会社!会社!になってしまいます。プライベートの時間でも頭から仕事が離れないのが社長です。ですから、家族の協力なしには社長業はできません。
その3.ビジネスは社長の器に相関します
ビジネスは自分で考えられる範囲でしか展開できません。また社長一人では会社は運営できません。会社を伸ばすには適材適所でよい人材(人財)が必要になります。しかし、魅力的な経営者でなければ、求める人財は集まりません。
良い会社にするには、社長自身が志を高くし、経営者として切磋琢磨しなければなりません。
ビジネスを成功に導く為には社長自身が経営者として「己を知る」ことです。自分の弱点を補完する布陣での組織運営を目指さなければなりません。また会社経営を確かなものにするには実務面を任せられる大番頭、実戦経験豊富な専門ブレイン、社長を有形無形に支える相談役(大久保彦左衛門のようなご意見番)に巡り会えることが重要になってきます。
その4.真っ白なキャンパスにビジネスを描く!社長の醍醐味
社長は自分の夢をビジネスとして描き、事業にチャレンジすることができます。自分が企画した商品・サービスを開発し、求める顧客を探し、市場を開拓していきます。しかし、売れると思っても、なかなか売れないのが現実です。市場開拓のハードルはどんなに素晴らしい商品サービスでもとても高いことを思い知らされることになります。
これに挫けず、諦めず、前向きに、必死に努力すると潮の流れが変わり、ビジネスがゆっくりと回りだしていきます。この流れを確実なものにするには、事業を推進するマーケティング戦略を具体的に考える必要があります。ビジネスの利益モデルをデザインするのです。経営理念やビジョンを掲げ、経営戦略やビジネスモデル考え実践していくわけです。
社長はやった人でないとわかりません。社員や役員とは責任の重さが全く違います。しかし、その重さを背負い、ビジネスにチャレンジできるのが社長の醍醐味なのです。